エロゲ、ノベルゲ英語学習最強ツール仮説

エロゲ、ノベルゲ好きオタクの語学実験記

素晴らしき日々~不連続存在~ 英語でプレイしてみた感想

8本目の英語エロゲ、ノベルゲ:素晴らしき日々~不連続存在~をクリアしました。
 
Steamストアページ


Steam版は非18禁なので18禁化パッチは別途充てる必要があります。
Jast USAから無料でダウンロードできますが、おま国なのでダウンロードをする場合はVPNを使うなどして、自己責任でお願いします。
 
 
評価
満足度 80
英文難易度 D~E(やや難~難)
 
色んな意味で自分の言語と世界の限界を思い知らされた作品。
ぶっちゃけプレイ開始してからクリアまで1か月半くらいかかりました。少しずつやったというのもあるけど、これが私の言語の限界・・・。
 
これをプレイしている間にスマホでgeniusのゲームを3つくらい消化できました。
とにかく今の自分の英語力の現実を痛感しましたね。この作品自体はもうずっと前からやろうと思っていながら手つかずだったので、やれてよかったのですが、ぶっちゃけ自分の作品理解度はかなり低いです。ISLANDはなんとかいけたし、素晴らしき日々も大丈夫かなと思ったのですが甘かった。ISLANDは考察を要するけど考えればなるほど、ってなるのですが素晴らしき日々はならない(笑)。
いや確かに考察サイトを軽く巡回してなるほどとは思ったし、そもそも日本語でやればもう少しまともな理解が生じている可能性はあったけど、ともかく今の自分の英語力では厳しかった。英文自体は特別難しくないはずですが、単純に内容がカオスで難しいので、結果的に英文難易度もD~Eあたりが妥当な評価なのかなと。途中日本語版を買い直そうかと思いかけたほどでした。実際今後もう一回日本語版をプレイし直すかもしれません。
ちなみにプレイ時は途中からボイスをカットしていました。卓司とかざくろあたりの声はかなり好きなので名残惜しくもあったのですが、日本語音声→英語テキストが連続するとやたら脳が疲れるのであえてカット。(これが理解の度合いを低めた要因でもあるとは思うのですが)
 
 
さてそんな自分の作品理解の低さを棚に上げつつ、感想、評価に入っていきたいと思います。
率直に言って、個人的には名作とまではいきませんでした。大作なのは間違いないです。作品に込められた熱量、狂気、シナリオの構成諸々非凡なのはわかるのですが、序盤の百合茶番が全然面白くないこと、他でもたまにあるコミカルな掛け合いが全然面白くないためただでさえ長い作品が無駄に冗長になっている点、後半の皆守編あたりからの展開が私の期待を悪い意味で裏切っていた点から総合評価として絶賛には届きませんでした。
 
逆に言うと序盤、ざくろ編までは本当に面白かったです。このテンションがずっと続くなら絶対もっと高評価を下していたことでしょう。ウィトゲンシュタインの初期の思想を下敷きにした作品という前情報からその線に沿った内容を期待していたのですが、実際にはウィトゲンシュタインの名言が所々で切り貼りされているだけで、作品全体がウィトゲンシュタイン哲学に基づいた世界観になっているとは思いません。というかまさかの人格バトル。
 
言語によって表現されたある形式の世界はどこまでいっても真であり、それぞれの命題は独立性と真実性を携えながら、お互い交わっているようでまったく交わらない・・・みたいな展開を勝手に期待していたのですが、作中における人物たちの認識のずれの大部分が、基本的に解離性同一障害に帰せられてしまうことや、人を超えたような存在の彩名の作品介入によって個々の命題の真実性が虚仮にされているような印象を受ける点がウィトゲンシュタインっぽくない気がしました。
 
まぁ私もあまり知った風な口を利くつもりはありません。ただざくろ編くらいまではその可能性があったのです。スパイラルマタイとか正気の沙汰ではありません。むしろ狂気的に美しいです。いじめによる極限状況から価値観を大転換するという、まさにニーチェが『道徳の系譜』でキリスト教徒を一刀両断した通りの、弱者的価値観顛倒による防衛機制が極まっています。しかしこれがウィトゲンシュタイン的に回収されるなら、ただ妄想に取りつかれて自殺しました、で終わらないはずだと私は思いたかったんです。
卓司もです。もっとも彼はただの解離性障害による一人格だった訳ですが、仮にそうでなかったらやはりざくろと同様にいじめによって強烈に蓄積されたルサンチマンからスパイラルマタイどころじゃない超妄想によって教祖の如く昇りつめていく様はやはり愚かながらどこか天晴れです。さらにそんな卓司君の独り相撲をあざ笑うかのように、エンディングでサティのPiccadillyが流れた時にはもう最高にしびれました。
 
そんな個々人の認識と世界に対して、独立した神聖な真実性が与えられ、讃えられてほしかったのですが、どうもそういう作品でもなかったなぁと。基本的には皆守や由岐メインのどこか勧善懲悪的単純さがあり、また全てを相対化できる絶対的っぽい存在の彩名があたかも個々のキャラクターの認識と世界を安っぽくしており、それが私にはあまり面白く映らなかったという訳なのです。
 
ですがやはりところどころで受けた衝撃をそれでなかったことにするにはあまりにも惜しい。間違いなくやってよかったと言える作品でした。
 
 
いくつか印象的だったシーン
 

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あとスクショは撮ってないけど皆守が武術の極意を掴む時に引用されていた合気道の達人や宗教家の話も好みです。ああいう神秘主義と言うか意識の極致が持つ可能性とウィトゲンシュタインが結びついてくれたらなぁっていうのが勝手な期待でした(笑)。