エロゲ、ノベルゲ英語学習最強ツール仮説

エロゲ、ノベルゲ好きオタクの語学実験記

語学ツールとしてのエロゲ、ノベルゲ 考2

今回は、前回の語学法考察記事に最近の所見を加えてみたいと思います。
 
前回の語学法考察記事
前回の記事で、語学という活動を以下のように二つに分類することが重要だと考えました。
 
  • 学習としての語学
  • 遊びとしての語学
 
一つ目はまさに語学と聞く時イメージされる活動のことです。語彙、文法、発音、リーディング、リスニング、ライティングと言った言語の各要素において学習、練習を積み上げる行為です。
二つ目はそれと対置されるアプローチ、遊びとしての語学です。こちらは上記のような態度を捨て、ただ楽しむ、理解する、慣れる、気づく、発見するといったことにフォーカスして英語のコンテンツに触れることです。記憶、分析、練習、復習といった要素は極力排除します。
 
前回エロゲ、ノベルゲ(以下ノベルゲ)は特に後者に向いていると言いました。
しかし今回は、ノベルゲは前者のアプローチにおいても実際には非常に有用だということについて語ってみようと思います。
 
私が前回ノベルゲは学習としての語学には向いていないと言った最大の理由は、ノベルゲのプレイ時間の長さ、つまりテキストの膨大さにありました。
学習的アプローチは意味を調べたり、それをノートなりAnkiなり(Ankiについてご存じない方は、Ankiのホームページはじめ他者様のサイトに詳しい解説が色々とありますのでそちらをどうぞ。説明サボりすみません。語学者にはマストアイテムと言いたいくらい強力なツールでお勧めです)に記録登録したり、復習反復する手間が発生するため、長いコンテンツだと最後まで終えるのが非常に大変なのです。
ノベルゲでそれを律儀にやるとゲームの方がなかなか進まず、時に強烈なフラストレーションに襲われます。途中でプレイするモチベーションさえ消えかねないのです。
 
すると…
楽しみながら英語学習に役立てるという動機でノベルゲプレイ→学習→コンテンツを楽しむことから学習行為化→純粋にストーリーを追えなくなりフラストレーション→モチベーション低下→集中力減って学習効率まで下がるor途中で挫折
 
ということになりかねないため、ノベルゲを英語学習に用いるときは基本後者の遊ぶためのアプローチに徹するのが良いというのが前回の主張でした。まぁ遊びではなく多読のため、と言い換えてもいいと思いますが。
 
ともあれ、それじゃあ学習のためにはノベルゲは使えないのかというと、いや、実はこの方向にもかなり使えるんじゃないかと最近思い始めまして…
そこで今日は、具体的に今自分がどんなことを実践しているかをシェアしたいと思います。
 
・遊ぶためのノベルゲとは別に学習用のものを用意する。
・今遊んでいるゲームを、一定時間学習のためにプレイすると決めてプレイする。
 
おそらく多くの人は後者を選びがちな気がするのですが、個人的には断然前者をお勧めします。というのも学習のためにプレイする場合と遊ぶため(あるいは純粋に読むため)にプレイする場合では明らかに意識の配分先が異なり、生じてくる理解体験というか言語体験も異なるので、一つのゲームを目的を変えながらプレイするのは、その意識のスイッチングが意外に難しくて、途中でフラストレーションが生じがちだからです。(経験談
 
なので目的ごとにゲームを分けた方が個人的にはやりやすいと思います。学習としてプレイする場合、どうしてもわからない語彙、文法、英語音声がついてるゲームなら聞き取れない音といった要素にもフォーカスしてしまうため、全体の意味理解のために頭を働かせづらいのです。
 
さてその上で、どのようにプレイしていくかと言うと、基本的には遊ぶとき同様意味理解に努めながらテキストを送っていくのですが、その際初めて見た単語、フレーズなどがあったらそれをAnkiに登録していきます。
 
ですがこの時、毎回意味を調べて登録するのでは膨大な時間が食われます。
そしてこれが最大の問題なのです。
というのもこのやり方だとあまり多くの語彙を登録できないということになります。なにせ一つ一つの登録に時間がかかりますから。ですがご存知のように英語には膨大な単語、フレーズが存在するため、そのようなペースではとても満足のいく英語運用力を実現するための語彙力を身につけられません。
 
かといって仮に時間を投資してこのやり方でたくさんの語彙を登録しようとしたら、今度は肝心の英語を純粋に読んだり聞いたりする時間を作れません。すると実践の場で確認できない語彙というのは覚えても覚えてもたちどころに記憶から消えていきます。結果として登録した語彙は相当な復習反復を強いられ、今度は復習反復に時間を大量に奪われます。そして新たな語彙のストックにさえ手が回らなくなるという悪夢のような循環が生まれてしまいます。
 
ではどうするかというと、私の現状の方法ですが、まずわからない表現が出てきたときは即スクショ。さらにその時、条件反射のようにすぐ意味を調べに行きません。推測で対処可能な場合や、全体の流れを失わない限りはそのままにしておくのが重要だと考えます。推測をまるで寄せ付けないような場合や、その意味を調べないと話の流れについていけなくなるような場合だけ調べます。そしてAnkiに登録する際、カード表にわからない語やフレーズを書いて、裏にはスクショした画像を貼り付けます。
 
こんな感じです。
 
カード表

f:id:May-zard:20220326142501p:plain

 
 
カード裏

f:id:May-zard:20220326142527p:plain

 
 
ノートタイプは穴埋めにしていますが、中は空欄です。
表面を見た時、裏面の画像や状況、文脈、なんとなくの意味イメージが出てくるのが望ましいですが、別にそれが出てこなくても、これは確かに登録した記憶があるな、くらいの、いわゆる認知記憶の状態になっていればOKとします。なぜこのように理解、記憶ともにファジーな状態にしておくかというと、脳に準備をさせるためです。
次に同じ表現が別の文脈で出た時、「あ、また出た」という認識を作るためです。このとき脳はそれの重要度を上げ、記憶効率が一気に増大すると思われます。逆に初めて見る語を片っ端から覚えるのは非常に骨が折れます。とにかく忘れやすく反復学習に膨大な時間を取られます。まして日本語でも意味をよく理解していないような英単語だった場合はなおさら不毛です。
 
単語にしろフレーズにしろ本当に膨大な数があり、それを律儀に一つずつ意識的に暗記するのはさすがに不毛だなと思い、今回の方法を試してみるに至りました。
これによって意味を調べる必要がなくなり登録時間が大幅に省略され、膨大な量の語とフレーズをストックしていくことが可能になります。認知記憶(とあわよくば文脈、背景の記憶)を作るくらいなので復習はその量に反して決して大きな負担になりません。英語を純粋に読んだり聞いたりする時間が作りやすくなります。するとそのコンテンツの中で、ストックした認知記憶と共鳴するチャンスも増える、という算段です。
共鳴が生じ、脳にとってその単語の重要度が上がってきた段階で、より意識的に覚えにいきます。意味や語法に曖昧さがあればそのとき初めて調べます。
 
このやり方は、他ジャンルのゲームや映画、アニメでもかなり効果的だと思います。これらの特徴は映像があることです。場面をしっかり切り取って、それを適度に復習しさえすれば認知記憶ぐらいなら容易に作れます。
あとはジャンルごとに一長一短があるくらいでしょうか。ノベルゲは文量が多いので語彙の宝庫。スクショも容易でストックを最も増やしやすいが、動きや画像は映画、アニメなどに比べて弱い。逆に映画やアニメは動きがあり視覚情報が豊富なので圧倒的に印象に残りやすいが、語彙の豊富さ、ストックのしやすさではノベルゲに劣るように思います。
 
 
最後に二点ほど補足です。
一つ目はこのアプローチをするにあたって、AnkiにPop-up Dictionaryというアドオンをインストールすることをお勧めします。カード中で選択した語が、Anki内の他のカードにもあった場合、それを表示してくれます。それによってかつて同じ語を登録したかどうかを知ることができるようになるので便利です。
 
もう一つは、マインドセットについて。学習用と決めたノベルゲは途中でやめてもOKと最初から決め込むことを強烈にお勧めします。クリア、つまり純粋な内容理解が目的ではないからです。もちろんできるならそれでいいのですが、その目的の混同を避けることが重要だというのは先述の通りです。プレイ速度や理解体験の深さから、クリアをそこまで重視する必要はそもそもないのです。